大会長挨拶

畑澤順会長のもと大阪で開催された第54回日本核医学会学術総会はARCCNMとの同時開催であり、欧米・アジアオセアニアから多くの核医学関係者が参加され国際性を感じる活気ある学術総会でした。近年様々な分野でグローバリゼーション(国際化)が唱えられる中、日本核医学会も2012年の分子イメージング戦略会議と米国核医学分子イメージング学会のPETの臨床試験ネットワーク(SNMMI CTN)との施設間協定(MOU)に始まり、2013年は中国核医学会 、昨年は米国核医学会とMOUを締結し、国際化に向けた足場を築きつつあります。理事長として、分子イメージングとRI内用療法を“核医学のイノベーション”の対象領域ととらえ、学会としてその展開を戦略的に行う“分子イメージング戦略会議”と“RI内用療法戦略会議”を設置し活動を強化してきました。安全かつ効果的な診療として、新たに開発された分子イメージングやRI内用療法を患者さんの手元に届けるためには、厳密な臨床試験のもと高いエビデンスレベルの臨床試験の結果を得なければならないと考えております。そのためには、国際標準たる手法で研究を進めて行かなくてはならず、学術学会として効率的に情報を得て、その活動を行うために、MOUの締結を進めています。厳格な臨床適応のもとでエビデンスを得るための症例数を集めるため、将来は核医学分野でも積極的に国際共同臨床試験を学会主導で推進していく必要があると考えております。

一方、春季大会は教育を目的とした学術集会であります。年々参加者数も増加傾向にあり、前回も1000名を超える皆様にご参加頂きました。第15回の春季大会は2015年4月25-26日にタワーホール船堀(東京)で開催致します。

欧米ではアミロイドPET製剤の臨床利用を国が承認する際に、読影の標準化が条件とされています。日本でも合成装置の薬事承認を受けました。今回の春季大会は欧米同様の対応を支援する教育プログラムとして、臨床利用が近付いているアミロイドPET読影講習を新たに組みました。また、核医学を専門とする診療放射線技師等を対象とした核医学診療における技術と臨床についてのセミナーを新設しました。

その他大会のプログラムとしては、初心者・卒後研修医・看護師を対象とした「核医学基礎セミナー」、専門医試験を受験される方、およびすでに専門医資格をお持ちの方を対象とする「核医学専門医教育セミナー」、医師・歯科医師・診療放射線技師を対象とした「PET研修セミナー」、PETの臨床研究を志す方々を対象とした「PET施設認証セミナー」を行います。

「PET研修セミナー」は医師・歯科医師コースと診療放射線技師コースを設け、PET核医学認定医、PET核医学歯科認定医や核医学専門技師の資格を取得される上で必要な、法的規制・放射線防護・読影のポイントなど、PET診療に必須の基礎知識と実際上の取り扱いが解説されます。厚生労働省が求めている「陽電子断層撮影診療に関する所定の研修」の要件に沿った形で構成されています。なおこのPET研修セミナーは日本核医学会が主催し、日本核医学技術学会、日本医学放射線学会、日本放射線技術学会、日本診療放射線学会、日本アイソトープ協会との共催となります。

「放射性医薬品取り扱いガイドライン講習会」は主として、薬剤師、診療放射線技師の方々を対象として前回同様に今大会でも併設して行われます。まだ講習を受けておられない方は、是非ご参加されますようお願い申し上げます。この講習会は、日本病院薬剤師会・日本核医学学会・日本診療放射線技師会と共同主催となります。

今回もより魅力あるプログラムを用意しておりますので、多くの皆様のご参加をお待ちしております。

第15回日本核医学会春季大会
大会長 井上 登美夫
(横浜市立大学大学院医学研究科 放射線医学)